ジーノ・ベーキが基礎練習ばかりさせられたことについて

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ジーノ・ベーキ(Gino Bechi、1913–1993)はイタリアのバリトン歌手です。
力強い声が魅力的な歌手です。
とはいってもこの時代は力強い声がスタンダードです。

「最後のベルカント継承者」とも言われています。
最近の「ベルカント歌唱」は息の勢いに任せた発声で、よっぽど声帯の強い超人(例えば、レオ・ヌッチ氏)しかまともに歌えません。(それでも、だいぶ音程が外れる)

ジーノ・ベーキが基礎練習ばかりさせられたことについて

プロ、音大声楽科講師も通う!宮前区在住 永田孝志の発声革命ブログから引用:

「8年間、基礎だけやらされて、歌わせて貰えなかったけど、基礎が出来たら、何でも歌えるように成っていた!」

ジーノ・ベーキ氏は20代、30代のほとんどを基礎練習に費やされましたが、誰よりも基礎を固めたおかげでどんな曲を歌っても潰れずに済んだわけです。
曲を歌いたいと本人が言っても、指導者が一切歌わせないという厳しさを見せてくれたのは大きいです。
指導者が声の完成まで長い時間がかかるということを認識していなければなりません。
1年や2年ちょっとでできるなんて思ってはいけません。
それぐらい輝きのある声を手に入れるためには長い時間がかかります。

スポーツは基礎トレーニングが大事としきりに言われるが…

スポーツの場合で考えると、トレーニングを十分にせずに試合ばかりやっていても、実力は上がるわけがないですよね?
基礎トレーニングなしにいきなり試合で難しい技をやろうとしても、できずに終わればまだいいほうですが、大けがする危険性もあります。
野球でいえばイチローさんが、サッカーでいえば三浦知良さんが長く続けられた理由はとにかく基礎練習を怠らないこと。
スーパープレイと輝かしく言われますが、その裏では地道な基礎練習を行っています。
とにかく地道で目立たなくて、そんなにやらなくてもいいのにと言われますが、それを誰よりも数多く淡々とこなしていく。
ただ回数を重ねるだけではなくて、自分の悪いところを瞬時に見つけられるというのも重要です。

スポーツだと基礎トレーニングは大事だとしきりに言われます。
しかし、歌の場合だと、基礎トレーニングを一切せずにいきなり難しい曲を歌わせるというのがまかり通っています。
発声がしっかり出来上がっていないまま、やれ発表会だやれコンクールだと一応の体裁を整える程度に終わってしまいます。
基礎ができていないから、歌うとすぐに声が枯れます。
最初のうちは響いている感じがして歌えている気になるんですが、中盤から喉の不調が出てきて、最終的に全く声が出なくなってしまいます。

特にJ-POPはひどいと言わざるを得ません。
全くトレーニングせずに高音域を出させるものですから、20代のうちから声が使い物にならなくなってしまいます
息の勢いだけで技術などへったくれもありません。
すぐに喉が乾燥して、声が枯れてしまう歌い方ですから、口パクに頼らざるを得ません
録音するにしても、後で音声をいじってそれらしく聴かせるしかできません。

3分間まともに歌える人はどれくらいいるのでしょうか?
マイクを離して歌える人はどれくらいいるのでしょうか?
おそらく0.1%もいないでしょう。
そんな人がいたら「奇跡の歌声」というキャッチコピーをつけて追いかけまわして、トレーニングの時間も与えず潰してしまうがオチです。

発声本自体が誇大広告

書店に行くと、「30分で3オクターブ以上がラクラク出せる」という系統の発声本がずらりと並んでいますよね。
正直言って、3オクターブ出せたからって歌で実際に使えますか?
本当のところ、まともに1オクターブが使い物になっていないですよね?

まずは1オクターブを使い物にすること。
ファルセットやミックスボイス(裏声)に頼らずに、1オクターブを埋まった声で出せるようにするのが先決です。
そこから音域を徐々に長い時間をかけて広げていけばよいです。
長い時間だけれど、それが結局のところ、いちばんの近道。

喉仏を下げたままにして、埋まった声で出せれば、ファルセットやミックスボイスは勝手に伸びていきます。
埋まった声がマックスの声なので、それより弱い声は自然とマスターできます。

1オクターブを埋まった声で出せるようになる本といえば、リチャード・ミラーの発声本しかありません。
まずはリチャード・ミラー氏の本を読んでくださいとしか言いようがありません。
埋まった声で出し続けることができれば、自然と喉は強くなりますから、まずはそのトレーニングから。

インスタントなのが人気なのはわかりますが、全く歌えない人が「3オクターブ」系統の発声本に手を出しても、上達は遅くなるばかりです。
実声を大切にしましょう。
裏声なんて勝手に伸びるので大して気にする必要はありません。

脱力中心のメソッド

「発声=脱力」というバカの一つ覚えのように書かれています。
特に、首周りの筋肉を脱力させるので、たちがわるいです。

「首や胸に力が入っていると、力んだ声になりやすいので力を抜いて歌いましょう」という記述ばかりです。
これを真に受けると、息の勢いに任せた声になりやすく、喉の負担が大きくなってしまいます。
首を若干後ろにグイっと引っ張るのが正解です。
あごを引いて首を少しだけ圧迫するような感じで歌いましょう。

脱力とセットなのが、腹式呼吸。
呼吸だけ一生懸命やっても、より息の勢いに任せた声になるだけで、まったく意味がありません。
声帯が乾燥してボロボロになって歌えなくなりたいなら構いませんが。
腹式呼吸を真面目にやると、首と胸を脱力させるので、自然と猫背になります。
姿勢が悪くなるので私は腹式呼吸をオススメしません。

表情を明るくすれば、声も明るくなる?

顔の表情は基本的には真顔です。
表情をつけると喉仏が上がります
喉仏が上がると浮いた声になり、声に隙間ができるので、息の勢いに頼らざるを得ません。

一見ニコニコしていてよさそうに見えますが、声が平べったくなっているだけです。
しかも悲しい表現や怒った表現など、他の表情を全く表現できなくなります。

最終的には顔の表情に頼って歌うのは、意味がないどころか害があります。

体に動きを付ければ、音楽にも動きが付く?

体の動きのせいでチラチラして見苦しいので、できる限り直立不動で歌ってください。
聴いている側としても音楽に集中できないです。

ゆらゆらと体を揺らすのは、その分声に集中できなくなりますし、余分に息を使います。
苦しくなるのが余計に早くなります。
また、発声がおろそかになって、自分が悪い発声をしているかさえも気づきにくくなります。
悪い発声をしているときは大体自分の声がよく響いているように聞こえています。
声が枯れる一歩手前ですから、その状態になったら休んでください。

最後に

スポーツだとトレーニングが大事だとしきりに言われるのに対し、歌になると基礎トレーニングを一切せずに難しい曲を歌わせるのがまかり通っている現状です。
歌では基礎トレーニングを教えられる人たちが少なくて、表情や呼吸法、振り付けなどに逃げる人たちが非常に多いです。
本来ならば声そのもので判断しなければならないのですが、声以外のもので「できたフリ」をするわけです。

「ボイストレーニング」の教材(ほとんどは喉を傷めつけているだけ)を読むときは、できる限り基礎に即したものかどうかを判断しながら読んでください。
声をよくしたかったら、カラオケに頻繁に行かないほうがよいかもしれません。
3か月に1回ぐらいに。