2次方程式の別解

2次方程式って中学校の最後に習いましたけれど、なかなかわからずに終わったという人いませんか?

\begin{align*}
ax^2 + bx + c = 0
\end{align*}

($a \ne 0$と$b$と$c$は実数)で表される$x$の方程式ですね。

これの解はというと

\begin{align*}
x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4ac}}{2a}
\end{align*}

で表されます。
教科書にも書いてありますが、最初のうちは「なんじゃこりゃ!?」としか思いませんね。
中学校の教科書には答えの出し方が難しいからといって、答えしか載せてくれていません。
「なぜこのわけのわからない式になるの?」という部分が抜けています。

先生に訊いても「覚えろ」の一点張りです。
本当は先生も教えたいのですが、文部科学省の通達のせいで詳しく教えることができません。
天下り式にやるしかないのです。

「答え」だけで教えてもそりゃ理解してくれません。
「答えの出し方」を教えてもらわなければ、理解できないところです。
「どうやって(how、如何)」とか「どうして(why、怎么、怎样)」という部分が大事です。

学校教育って『ハリーポッターと賢者の石』の最初に出てくるダーズリー一家みたいですね。
「質問は禁止」
と。
感覚的なところはそれでもいいのですが、明らかに知識として吸収できることに「質問は禁止」を適用してしまっては何の進歩もありません。

というわけで、2次方程式の解き方について見てみましょう。
理解しやすいようにするために、$x^2 + bx + c = 0$の形で考えてみましょう。
2乗の係数が1で考えたほうがわかりやすいです。
$a$が1でないときも両辺を$a$で割ればいいのですから。

一般的な解き方

$x^2 = c$の形の方程式だったら、いきなり平方根して、$x = \pm \sqrt{c}$と答えを求めてしまってよいです。
ルートの中身は必要に応じて有理化しましょう。
そうでないと採点で×を食らってしまいます。

因数分解が使えるパターン

因数分解ができれば次のパターンに当てはめてできます。
このへんは感覚論に近いので、何度も問題を解くしかありません。

  1. $x^2 + (a + b)x + ab = (x + a)(x + b) = 0$
  2. $x^2 + 2ax + a^2 = (x + a)^2 = 0$
  3. $x^2 – a^2 = (x + a)(x – a) = 0$

この方程式を解くには、0の掛け算を利用します。
小学校2年生レベルの算数です。
「$X \times Y = XY$」という掛け算を考えてみましょう。
$X$も$Y$も0ではないときは、$XY$も0にはなりませんね。
$X = 0$で$Y$が0ではないときは、$XY = 0$になります。
逆に$X$が0ではなくて$Y = 0$のときは、$XY = 0$になります。
$X = Y = 0$のときは、言うまでもなく$XY = 0$になります。

以上を踏まえれば、$XY = 0$となるときは、$X$と$Y$のどちらかか、あるいは両方とも0になったときです。
数学では今の文章を「$X = 0$または$Y = 0$($(X = 0) \vee (Y = 0)$)」と表現します。
「または」の言い方が独特ですね。
両方が成り立つときにも「または」に含まれます。

これを利用すると、1.の答えは、$x + a = 0$または$x + b = 0$になります。
したがって、$x = -a$または$x = -b$です。
こういう書き方をするのは面倒くさいので、$x = -a, -b$と教科書では書いてあるはずです。
コンマを「または」の意味で使っていますね。

2.の答えは「$x + a = 0$または$x + a = 0$」と解釈することができます。
これは「$x + a = 0$」と同じなので結果は「$x = -a$」です。

3.の答えは「$x^2 = a^2$」ともってきてもいいですが、さっきのように「$x + a = 0$または$x – a = 0$」という形にすると理解しやすいです。
この答えは「$x = -a$または$x = a$」と表されます。
マイナスの場合もプラスの場合もまとめて「$x = \pm a$」と書きます。
なるべく短く書くのが数学の流儀です。

因数分解が使えないパターン

$x^2 + bx + c = 0$を一目見ても、因数分解できるかどうか怪しいときには、$X^2 = C$という形を作りましょう。
$X = \pm \sqrt{C}$という形ならなんとか解けそうです。

では式変形してみましょう。

\begin{align*}
x^2 + bx + c &= 0\\
x^2 + bx &= -c
\end{align*}

と、まずは$c$を右側にもっていきます。
$b$に関係するものだけで計算したいからです。

このままでは計算しづらいので、因数分解パターン2を使える形に持っていきます。

\begin{align*}
x^2 + bx + \frac{b^2}{4} &= \frac{b^2}{4} – c \\
\left(x + \frac{b}{2} \right)^2 &= \frac{b^2}{4} – c \\
\end{align*}

両辺に$b^2 / 4$を足すと、パターン2の形になっているではありませんか!?
このような変形のことを平方完成といいます。
$X = x + b/2$、$C = b^2/4 – c$と考えると、$X^2 = C$の形になっていることがわかるでしょう。

もうあとは平方根するだけです。

\begin{align*}
x + \frac{b}{2} &= \pm \sqrt{\frac{b^2}{4} – c} \\
&= \pm \frac{1}{2}\sqrt{b^2 – 4c} \\
x &= \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4c}}{2}
\end{align*}

と最初に見せた解の公式のとおりになっています。

ルートの中身がマイナスになっても大丈夫?

中学校の段階ではそういう問題は出ませんのでご安心ください。

しかし高校以上の数学ではそういう問題が出てきます。
ルートの中身がマイナスになったとき、虚数という概念を使って表します。

\begin{align*}
i = \sqrt{-1}
\end{align*}

と定義して、$i$という文字を虚数単位として使います。
例えば、$\sqrt{-2} = \sqrt{2}i$というように表します。
ルートの中身がマイナスになったという印です。

別の解き方

Po-Shen Loh教授の方法です。
このアイディアは簡単そうに見えますが、見落としがちなところに着目してくれています。

平方完成する一般的な解き方だと、結構労力を使いがちです。
今度は別のアプローチから判断してみましょう。

解と係数の関係について注目してみます。
これは高校数学の範囲になります。
高校の教科書には方程式の解をギリシャアルファベットで書きます。
今回は2次方程式なので、$\alpha$(アルファ)と$\beta$を使います。

$x^2 + bx + c = 0$の解を$\alpha$と$\beta$とすると

\begin{align*}
x^2 + bx + c = (x – \alpha)(x – \beta)
\end{align*}

という関係が成り立ちます。

ここで、$(x – \alpha)(x – \beta)$を展開してみると

\begin{align*}
x^2 + bx + c &= (x – \alpha)(x – \beta) \\
&= x^2 – (\alpha + \beta)x + \alpha\beta
\end{align*}

となります。
どんな$x$の値を入れても、この形が成り立たなければいけません(恒等式という)ので、$\alpha + \beta = -b$、$\alpha\beta = c$でなければなりません。
これらを解と係数の関係といいます。

平方完成の式を見てみましょう。

\begin{align*}
x^2 + bx + c = \left(x + \frac{b}{2} \right)^2 – \frac{b^2}{4} + c
\end{align*}

という式に変形できることがわかります。
右側の$b / 2$を利用するところがポイントです。
直感的に見れば、$\alpha$と$\beta$の平均をとったら$-b/2$になりますし。

$-b/2$が平均値ということで、$\alpha = -b/2 – u$、$\beta = -b/2 + u$($u$は虚数を含んでいてもよい)とおきます。
解と係数の関係から

\begin{align*}
c = \alpha\beta = \left(-\frac{b}{2} – u\right) \left(-\frac{b}{2} + u\right) = \frac{b^2}{4} – u^2
\end{align*}

と変形できます。
$-u^2$を左側に、$c$を右側に移動すれば
\begin{align*}
u^2 = \frac{b^2}{4} – c \iff u = \pm \sqrt{\frac{b^2}{4} – c} = \pm\frac{1}{2} \sqrt{b^2 – 4c}
\end{align*}

と平方完成で求めたときと同じ答えが出てきます。

重解だったら、$u = 0$になるので、判別式の代わりにも使えます。
$u^2 < 0$になってもこの方法は使えます。 これを見たときには感動しました。 2次方程式の解くときに少し時間がかかりますから、速く解ける方法が提案されてよかったです。 この考え方は3次方程式にも活かされるのでしょうか?

最後に

学校教育にはまだ浸透していませんが、いろいろな解き方を知っておくと数学がもっと面白くなるかもしれません。

2次方程式って実は、日常生活にも根付いているものです。
自転車や自動車の移動にも、ドアが強く閉まらないようにするためにも、2次方程式は使われています。

たかが2次方程式、されど2次方程式ですね。
解き方がもう一つ提案されたのは大きな快挙です。