観客のせいにするなど言語道断
フアン・ディエゴ・フローレス(Juan Diego Florez)氏はテノールの人で、モダン歌唱の代表格です。
マスタークラスでこんなことを言っていました。
1:11からです。
If they don’t hear you, it’s their problem.
日本語だと、
「あなたの歌声を聴いてもらえないのは、観客に問題があるからだ(聴く耳を持っていない)」
です。
フローレス氏の言っていることは、だいぶ問題発言です。
観客のせいにするなど言語道断
飲み屋で少人数で酔っぱらった勢いで話すにしてもよくないですが、
こういう大勢の不特定多数の場で話すのは問題です。
聴いてもらえないのを観客のせいにするなど言語道断です。
自分の実力がないから聴いてもらえないだけです。
観客をイエスマンばかりで固めて何が面白いのでしょうか?
私にとっては全部賛成よりも、少しばかり反対意見を言われたほうが安心できます。
少しばかり納得いかない顔をされたほうがよいです。
お笑い芸人でも、なかなか笑わない観客に対して「笑えよ」と言う光景がときどき見られます。
「笑えよ」と言ってしまったらおしまいです。
観客が笑ってくれないのは、あなたの実力がないからです。
そして焦って、相方の頭を叩いて受けをとろうとする。
こうなってしまったら興ざめですね。
観客に問題があるわけではありません。
観客に
- 見てもらえない
- 聴いてもらえない
- 笑ってもらえない
のは、芸事をする人に原因があります。
観客に原因を求めるようになったらおしまいです。
閉鎖的な環境で起こりやすい
特に、観客のせいにしたがるのは、閉鎖的な環境で起きやすいです。
あまり人の入れ替わりもなく、年齢だけが積みあがっていくような環境では、
一番長老の言うことを正しいという傾向が強いです。
カルト教団の教祖様みたいになっているような組織ですね。
その分野に詳しくない人が意見すると、
「これだから素人の言うことは…」
という魔法の言葉で、本当に正しい指摘であっても退けてしまいます。
その分野自体は詳しくなくても、
その中のある事柄に関しては詳しくアプローチできるということもあります。
というか、むしろそういう人たちが意見してくれたからこそ、
発展していけるのだと思います。
分野外の詳しくなくても、
無知な人だからこそわかるような視点だってあります。
昔は私もよくやらかしていましたが、
最近ではこういう素人の目線というものも大事にしています。
最後に
最後にもう一度言います。
あなたの歌声を聴いてもらえないのは、観客に問題があるのではなく、あなたに問題があるからだ
と。
フローレス氏は猛省すべきです。
公衆の面前で発言するなら、言葉を選ばなければなりません。
受け狙いで言ったのかもしれませんが、
「聴衆に問題がある」はだいぶ問題発言です。
声楽に詳しくない人のほうが、わざとらしい歌い方を見抜いています。
日本で、合唱とか声楽とか素人に受け入れられない理由は、
顔芸に走ってわざとらしくなるからです。
決して素人の理解力がないからではありません。
直感はどんなもっともらしい理論よりも恐ろしいですからね。
「これだから素人は…」と言っているうちは、発展もくそもありませんね。